[漆器] カテゴリー
2008/1/8 (火曜日)
輪島塗だけでなく、漆器づくりはまずベースとなる木地をつくります。
家でいえば、いわば骨格を立てる土台となる部分ですので、その完成度によって
最終的な塗りの質を大きく左右する重要な工程です。
しかし、その全貌はなかなか伺い知ることはできませんので、今回少しご紹介
したいと思います。
輪島塗づくりにおける124もの工程は、大きく8〜10の作業に分類されると書き
ましたが、その分業制度の一番手である木地屋さんは大きく4種類に分けられます。
]侈效蓮覆錣鵑じ) − お椀や茶托など丸味のあるものをつくる
∋慂(さしもの) − 重箱や箸箱など四角いものをつくる
6癖(まげもの) − 茶びつや湯筒などをつくる
に冖效蓮覆曚Δじ) − 花器や座卓の脚など複雑なものを朴の木でつくる
い遼僂蓮◆屬泙鵑日本昔ばなし」にもよく登場した岐阜県高山の郷土料理、
“朴葉味噌(ほうばみそ)”に使われる朴の木のことです。
輪島キリモトは、核となる“桐本木工所”がもともと朴木地屋さんであったため、
漆器から家具、ステイショナリーなど複雑な形状の木地を難なく生み出すノウハウと
技術力があるのです。

木地の数々(桐本木工所にて)
木地をつくるには、まず素材となる木を選びます。木の狂いを避けるため、天日で
3年ほど自然乾燥させたのち、倉庫で5、6年寝かせます。その木から、粗く削った
木の型(荒型)を作り、1ヶ月ものあいだ燻煙乾燥します。
それをさらに数ヶ月から1年以上寝かせ、本格的な木地に挽いていくので、想像
以上に長い時間を要します。
輪島を訪れた際、輪島キリモトの“すぎ椀”の木地を担当する寒長さんの工房に
お邪魔させていただきました。
工房の中に入る前から、木を燻した香ばしいいい匂いが周辺に漂っています。

寒長さん(左)と桐本さん(右)

テカテカに黒光りした燻煙室の壁面。

まるで積み木のように、円柱に積み上げられた燻煙済みの荒型
木の燻製です。

十分に燻して寝かせた荒型を挽くロクロ

木を削るカンナ

記念に一ついただいた、燻煙済みの荒型。香りが部屋に広がっています。
次回は、漆塗りの民宿をご紹介します。
2007/12/30 (日曜日)
漆器の最高峰 「輪島塗」
今回掲載したブランドは、輪島塗の『輪島キリモト』です。
塗りの素晴らしさで、世界にその名をとどろかす、日本代表の漆器“輪島塗”。
数ある漆器産地の中でも、重要無形文化財として指定を受けているのは、
輪島塗ただ一つだけです。
とろりと上品で妖艶な艶、深みのある落ち着いた色、その見かけとは逆に丈夫で
長持ちする輪島塗の漆器は、名実ともに“漆器の最高峰”といえるでしょう。

大きな特徴は、輪島産の珪藻土を焼いて粉にした“地の粉(じのこ)”というものを
下地に塗る点です。その粉を漆に混ぜて二度三度と塗ると、頑丈な塗膜ができ、
ベースとなる木地(きじ)の強度を上げることができるのです。
ちなみに“珪藻土”とは、海や湖沼に堆積する植物性プランクトンの死骸で、
七輪の原料としてよく知られています。耐火性、断熱性、吸湿性に優れ、
古くから壁材にも使われていましたが、昨今の自然回帰ブーム、エコブームに
乗って、ふたたび脚光を浴びている自然素材です。
その機能性を発見し、室町時代の頃より漆器に用いていた先人達には脱帽です。
“よそゆき”ではない、“いつもの”うるし
『輪島キリモト』は、漆プロデューサー・桐本泰一さんのブランド。
サラリーマン時代に、家具や文具のコクヨでオフィスプランニングを担当していた
桐本さんは、1987年に地元へ戻り、輪島塗の世界に足を踏み入れたそうです。
自社商品の開発・製作以外に、全国各地を飛び回り、一年中大忙しの桐本さんですが、
つい先日も東京ミッドタウン内の『虎屋』で開催した展示とセミナーは大好評でした。
また、他業種の高級ブランドの依頼でオリジナル作品を製作することも多く、
今月ある女性誌に取り上げられた企画では、輪島塗に蒔絵をほどこした
ルイ・ヴィトンの素敵な小物入れを製作されました。

漆の伝道師、桐本泰一さん。
通常、輪島塗は、完成までになんと124もの作業を経て完成されますが、分業制度
をとる輪島では、その作業は大きく8〜10の分野に分けられ、各工程を専門の
職人が仕上げていきます。
しかし、もともと実家が木地屋であった桐本さんは、木地から塗りまで一貫して生産
することができ、『輪島キリモト』ならではの感性豊かな漆器が生み出せるのです。

“すぎ椀”は、極上の艶感を帯び、まるでパールがかったような輝き。

柔らかい手ざわりと口あたり
手にとった瞬間、なんとなくしっとりした手ざわりですが、それは、漆というものが、
乾燥によって硬化するのではなく、大気中の水分を漆の分子が取り込みながら
硬化していくからだそうです。つまり、硬化しても内部に水分を含んだ状態で、
手で触るとみずみずしい人肌のようにしっとり感じるのです。
漆器は使わずにしまっておくより、毎日使うことにより、水分で潤いを保つことが
できる、生きた器なのです。

木地を作る道具“かんな”の数々
輪島というと、2007年3月の“能登半島地震”が記憶に新しいと思いますが、
名物には、輪島塗のほかに、“日本三大朝市”として岐阜県飛騨高山や
千葉県勝浦の朝市と並び称される朝市があります。
1000年以上続いているここ輪島の朝市は毎日開催され、長さ約360メートルの
「朝市通り」が、地元の人や観光客で賑わっています。
9月末に訪れたときも、漆器や海産物などを売る店が数百店舗並んで、威勢のいい
お母ちゃんたちの声で活気づいていました。
つづく。
2007/11/29 (木曜日)
TOKYO TOSHIの掲載商品ではありませんが、素晴らしい香炉を見せていただく
機会があったので、ご紹介したいと思います。


前回ご紹介した『喜八工房』の取引先、『中山漆工』が手がける“香炉”です。
“香炉”は、茶道、香道、仏事に使われる、文字通りお香を焚くための道具で、
今で言うアロマポットのことです。

これは螺鈿(らでん)を用いた香炉のビフォア・アフター。
左写真の左のものは、貝殻をはめ込んだばかりで磨きをかける前の状態です。
奈良時代にシルクロード経由で日本に伝わったとされる螺鈿は、アワビ、夜行貝、
白蝶貝などの貝殻を薄く板状にし、木地にはめ込み、装飾していく伝統工芸。
『中山漆工』代表の中山幸彦さんは、国宝の春日大社本殿調度品の蒔絵を担当
する職人さんです。螺鈿と加賀蒔絵を組み合わせた中山さんの優雅な香炉は
おもに多くの茶道家元に使われています。
個人的には、あまり縁がないアイテムですが、あまりに素晴らしいのでご紹介
させていただきました。
2007/11/24 (土曜日)
開湯1,300年の“山中温泉”は、山代温泉に次ぐ石川県加賀温泉郷の代表的
温泉地。江戸深川から岐阜大垣までの道程を書いた『奥の細道』の松尾芭蕉は、
温泉嫌いにもかかわらず、終点間際に8泊もしてしまうほど山中の名湯が
気に入ってしまったそうです。
400年もの歴史がある、湯治客相手の土産物として発展した山中漆器は、
同県の漆器産地・金沢や輪島よりも関西に近いという地の利を活かし、
低価格の大衆製品の一大産地としてさらなる発展を極めました。
今では、江戸期に導入された「塗り」や「蒔絵」の技術によって、茶道具を
中心とした塗り物の産地としても有名です。
漆器は通常、厚めに木を削った“木地”のベースを、薄くして漆を塗ったり、
蒔絵をほどこしたりという、何十もの工程を経て作られます。

山中漆器は、轆轤(ろくろ)を用いて木地を作る、高度な「轆轤挽き(ろくろびき)」が特徴で、
他の産地から木地を買い付けにくるほど、低価格で質の高い木地を生産しています。

積み上げられた木地の山。 漆を塗っているところ。

自社ブランドだけでなく、全国の優れモノを展示する、喜八工房のクラフトショップ。
山中漆器一番の老舗・喜八工房は、すぐ裏に山があり川が流れる自然が豊富な場所に
工房とショップを構え、いまのライフスタイルに合うようなモダンな漆器を世に送り出しています。

“薄挽き(うすひき)”という極限まで薄く加工する技術を用いて生まれる「薄挽き鉢」。
誰しも驚く美しさ。 そして驚くほど軽い。